1 管理人

京極 流月

中等部二年
京極 流月さんのお部屋♪
2 流月
〜部屋の陽子〜

白い色で統一された家具は必要最低限の量。
棚にはたくさんのCDやカセットテープ、MDと、それらを聞くためのコンポが置いてあります。
3 流月
〜テープNo.1、十二月十七日〜

(テープレコーダーのスイッチを入れます)

天姫学園に本日到着しました。

今日はなんといきなりお友達ができちゃいました♪
アリスさまとバロンさま、あっ、ちなみにバロンさまはアリスさまと一緒にいる猫さんです。
アリスさまはわたしにすごく気を遣ってくださって、わたしの身を守ってくれるからと、小さな箱・・・(ぺたぺた)・・・うん、箱ですね。
とにかくそういうすごい物をくださったんです♪
いつかちゃんとした形でお礼をしようと思います♪

リオンさまという方にもお会いしましたが・・・、出来ればあまり触れたくないです。なんだか、あの方はすべて諦めてらっしゃる気がして・・・

そういえばアリサさまにまだお会いしてないですね、早くお会いしたいです。

・・・さて、それじゃあこれくらいで・・・

(レコーダーのスイッチを切りました)
4 流月
〜テープNo.2、いいこと、わるいこと〜

(テープレコーダーのスイッチを入れます)

今日は、いろいろ考えさせられました・・・

アリカさまは人を殺すことでしか、生の実感を得ることが出来ないとおっしゃられました。
人が生きていくためには犠牲が必要なのだとも・・・

人を殺すのはわるいこと、けど、アリカさまが生きていくためには仕方なくて・・・

・・・何がいいことで、何がわるいことなのでしょうか?
・・・わたしには、はっきりとした答えを出すことが出来ません・・・

(レコーダーのスイッチを切りました)
5 流月
〜テープNo.3、役立たず〜

(テープレコーダーのスイッチを入れます)

・・・わたしは・・・わ、たしは・・・

(一度首を振り)

・・・・・・今日は、お義姉さまへのクリスマスプレゼントを買いに行くはずが、いつの間にか廃墟にいました。
そこで困っていた所を冬狐さまに助けていただきました・・・。
ご迷惑をかけてしまいましたね・・・。

そのすぐ後に真帆さまがいらっしゃいました。
冬狐さまと真帆さまは恋人同士でいらっしゃるようです。
・・・羨ましい、と感じました。
・・・わたしみたいなお荷物と、共に歩いてくださる方なんていらっしゃいませんから・・・・・・。

・・・アリカさまのお役に立ちたかったのに、殺していただくことすらできなくて・・・
アリカさまはお優しいから・・・わたしを殺さないでいてくださる。

・・・結局わたしは役立たず・・・
人に与えてもらうばかりで、何も返すことができない・・・役立たず・・・・・・

(泣きたいのに泣けない、苦しげな顔でレコーダーのスイッチを切ります)
6 アリカ
……流月…ほ、ほんとーにあたしなんかが入っちゃっていーんですかぁ?

いや、ここまで来ていまさら……って感じではあるですけどぉ……


なんとゆーか……まあ、こ…心の準備とゆーやつがアレでアレなかんじで……
(部屋の前でかなり挙動不審な感じ)


【書き込んでしまいました〜。削除パスは2906です】
7 流月
ふふ・・・♪ アリカさま、遠慮なんてなさらないでください? わたしの方からご招待させていただいたのですから・・・♪

(アリカさんを伴って部屋に入ります)

アリカさま? 紅茶はお好きですか? わたし淹れて来ますね・・・♪

(割と手慣れた手つきで紅茶を淹れます)

【書き込みありがとうございます♪歓迎なのですよ〜】
8 アリカ
そ、そうですけどぉ……やっぱりなんか……


あ、はいはい……お願いしますぅ…


ふわぁ………(部屋の中を見回して)
9 流月
(アリカさんが部屋を見てらっしゃるのを察し)
あ、あの・・・アリカさま? どうかされましたか・・・ってひょっとして、わたしの部屋で何かお気に召さない点でも・・・;(おろおろします)


あ・・・アリカさまお茶が出来まし・・・きゃっ!?(お茶を運ぶ途中、足を滑らせ倒れそうになります)
10 アリカ
いやいやー……お年頃の女の子の部屋なんて入ったことなかったですからぁ……つい(苦笑い)


!………っと。
流月……だいじょーぶですかぁ?(片手で紅茶のカップ受け止め、もう片方で流月さんを受け止める)
11 流月
まぁ・・・そうなのですか?・・・けど、アリカさまだってお年頃の女の子じゃないですか・・・♪


あ、ありがとうございますアリカさま・・・
(ふと、自分がアリカさんに抱き付くような形になっているのに気付き)
・・・っ///
ご、ごめんなさい!? わ、わたしったら・・・っ、て、わわわわわっ!?(急いで離れようとしてバランスを崩してじたばたと;)
12 アリカ
……えーと、あたし…かるく百歳越えてるんですけどぉ……


え!ちょ、流月!?な、なにやっちゃってるんですかー!?(慌てて流月さんを引っ張って抱き留めようとするが自分もバランスを崩し倒れる)………る、流月……ケガはないですかぁ…?(流月さんの下敷きになってます)
13 流月
あら・・・!(びっくり)そうだったのですか? ・・・? えと、ということはアリカさまは長命な種族の方なのですか?


は、はい大丈夫です・・・すみません、アリカさま; ご迷惑おかけして・・・・・・
・・・あ、あの・・・アリカさま・・・(そのままぴたっと体を寄せて)
・・・ごめんなさい、アリカさま・・・少しだけ・・・このままで・・・(アリカさんの肩口に顔を埋めます)
14 アリカ
あははー♪人間ですよぅ……いや、元…ですかねぇ……


ん……(流月さんを抱きしめる)………あたしでよかったら、いつでもこうしてあげますぅ………
15 流月
・・・アリカ、さま?
・・・わたし、アリカさまが話したくないのでしたら無理には・・・その・・・(いろいろ聞きたそうです)


アリカさま・・・♪ うれしい・・・♪
(ぎゅうっとしがみつき)
えへへ・・・ふにゃ・・・♪(うっとりしてます)
16 アリカ
……昔、ロンドンに一人の人がいました……その人はそれなりに裕福な家庭に生まれ、わりと優秀で、周りに言われるまま医学の道をなんとなく志していました…(静かに話し始めます)


あは……♪
流月、猫みたいです…♪(流月さんの頭を撫でながら)
17 流月
あ・・・(語らせてしまっていることを申し訳なさそうにしながらも、ちゃんと静かに耳を傾けます)

ねこ・・・?
・・・にゃーん♪(うれしそうにすり寄ります/少し照れてます(笑))
18 アリカ
…その人には人間としてある意味致命的とも言える欠陥がありました………痛みを感じない……酷いときには味覚・触覚すら……


る、流月……っ
………可愛すぎますぅ…っ!(ぎゅっと抱きしめます)


【アレな展開ですみません; 気に入らないのでしたら"2906"で削除を…】
19 流月
え・・・? そ、それって・・・?
そ、それにもしかして・・・そのおはなしの方がアリカさま・・・なのですか・・・?


うにゅ・・・♪(気持ち良さそうに身を委ねます)
アリカさま・・・、だいすき・・・♪
・・・アリカさま・・・、わたしみたいな役立たずでも、これからもお側に置いていてくださいますか・・・?


【いえいえ、大丈夫ですよ〜♪】
20 アリカ
(小さく頷く)……見えるだけ、聞こえるだけ……何かに触れても自分を傷つけても何も感じない………そんなのは、幽霊と変わりませんよ……多分


当たり前じゃないですかぁー♪……それに、流月は役立たずなんかじゃありません……
21 流月
そんな・・・っ!
アリカさまは幽霊なんかじゃありません・・・っ、アリカさまはアリカさまです・・・!
わたしの大好きなアリカさまです・・・っ!


アリカさま・・・、そう言ってくださるのはうれしいですけど、・・・わたしは・・・ほんとに役立たずですから。
(悲しそうに笑いつつ)
22 アリカ
ありがとう、ですぅ……でも、昔はホントにそんな感じでした……その頃のあたしの出した答は…「外界があたしに影響を与えてくれないのなら、あたしから外界へ…」


……そんなことないですよぅ…流月は役に立ってくれてますぅ……
23 流月
アリカさまから、下界へ・・・・・・?(先を促すように)


・・・ありがとう、ございます・・・♪ わたしを気遣ってそう言ってくださってるのですね・・・
24 アリカ
えぇとぉ………あたしが斬ることで他人が痛がり悲鳴を上げる。あたしは外界へ影響を与えることができる=生きている……みたいな…?


……ホントに…そう思ってます……流月は…役にたってるんです……
25 流月
それが・・・アリカさまが生きる実感を得る術・・・アリカさまの答え・・・だったのですね・・・


け、けど・・・わたしは、何も出来ません・・・。
特別な何かも、誇れるものすらない・・・
こんなわたしが・・・一体何の役に・・・(悲しそうな顔で)
26 アリカ
………まあ、そんなこんなで……目をつけられて殺されて、やっと………と思ったら無理矢理起こされてまた殺さなきゃならなくなって……


何の役に?私の役に立ってます…あたしは流月に救われたんですよぅ?
27 流月
殺す・・・? 一体誰を・・・?


わ、わたしがアリカさまを救った・・・って、わたしがそんなことできるわけ・・・
28 アリカ
さぁ…殺せって言われたから殺しただけで…誰かまでは知らないですねぇ。まったく…せっかく死ねたのに不死者として起こされる羽目になるなんて、考えもしなかったですよぅー…(ため息をつき
ま、そんなこんなで人外にさせられたあたしがなんだかんだで今に至るわけでー……つまらない話でしょー?(苦笑いをして


…救われたんです。あたしがそう思ってるからいいんです。これは確定事項、反論はなしです……どぅーゆーあんだすたん?(頬を軽く引っ張り


【今まで放置状態になってて申し訳ありませんでしたぁ!;(土下座】
29 流月
あ、あいあんだすたん…です。
(軽く困ったように笑いながら)

…あと、つまらなくなんかないです。
アリカさまのことをまた一つ知ることが出来て、私は嬉しいです♪

【いえいえ♪
お気になさらずですよ♪】
30 アリカ
流月……ありがとうございますぅ♪(ぎゅっと抱き締めて

じゃあ…流月のことも聞かせてもらっていいですかぁ?…や、もちろんいやじゃなかったらですけどぉー…ι


【あぅ…有難うございますιしかし…復旧まで一週間もかかるとはびっくりです】
31 流月
わたしのこと、ですか…?
…はい…じゃあ少し、昔話をしましょうか…♪

私が生まれたのは、中国の山の中にある小さな村でした…。
何もないところでしたけど、平和で…とても良いところで…♪

…ある日のことです。
怖い人たちがいっぱい来て、私たちを研究所に連れ去ってしまったんです。
私たちの一族には、涙で人を癒す力がありましたから、それが目的で………。

…それからはずっと研究の毎日でした。
……あそこで私たちが受けた扱いは、出来ればもう思い出したくありません……。
たくさんいた村の人も、私の家族も、一人減り、二人減り…いつの間にか私だけになってしまいました……。
私の目が見えないのは、その時の『研究』の副作用です……。
(悲しげに苦笑しつつ、瞳はアリカさんの方を見つめ)
32 アリカ
……副作用…そうだったんですか…(ギリッ、と音がするほど奥歯を強く噛み


…それから…どうなったんですかぁ…?
33 流月
……目が見えなくなって、涙も流せなくなって、私ももう殺されちゃうのかなぁ…って思った頃でした。
研究所がすごく騒がしくなって、研究所の人たちの悲鳴が聞こえてきたんです。
私恐くなって、壁伝いに部屋の隅まで行って一人で震えてたんです。

……悲鳴が聞こえなくなってしばらく経った頃、ゆっくり扉が開けられたんです。
扉を開けたその人は私の手を優しく掴むと、暗い研究所から外へ連れだしてくれて……こう言ったんです。
「見えないと不便だろうから、あたしが手を引いてあげるよ」…って。
…それがアリサ義姉さまとの出会いです…♪
34 アリカ
へぇー…そうだったんですかぁ♪


その後は、どうなりましたー?何かされませんでしたかぁ?…いろいろな意味で(ぇ
35 流月
……?
いえ、別に何もされませんでしたよ?
(アリサの本性を知らず/ぁ)
しばらくは不便だろうからって、着替えも手伝ってくれて…♪(ぁ)
36 アリカ
……っ、へぇ…ほかに、なにか…手伝ってもらったりとかありましたかぁ?
また、そのときになにか気になったことはないですかー…?(なんとか平静を保ちつつ問い/ぁ
37 流月
他には……お風呂にも入れてもらいました♪(ぁ)
特に気になったことと言っても…
…あ、そう言えば、お風呂に入れてくれる度にアリサ義姉さまは私の髪を誉めてくださいました…♪
「綺麗な髪だから大事にするんだよ?」って、優しく髪を洗ってくれて…♪
(やらしいことはしていない模様?/ぉ)
38 アリカ
…お、風呂………あ、でもだいじょーぶみたいですねぇ…確かに流月の髪は綺麗ですからねぇー♪(露骨に安心した表情で流月さんの頭を撫で
39 流月
あ、ありがとうございます…♪
アリカさまに気に入っていただけたなら、私も嬉しいです♪
(嬉しそうに微笑み)
…綺麗にしてて良かった…♪////
40 アリカ
さらさらしてて、撫でるほうも気持ちいいですからねぇー…(髪を梳くようにして
41 流月
あ、アリカ、さま……
その、気持ちいいんですけど、あまり触られると…恥ずかし…////
(頬を染めてうつむき)
42 アリカ
あはは、かわいいですねぇー♪(ぎゅっと抱きしめて

気持ちいいならいいじゃないですかぁー♪
43 流月
いえ、けど、その…////(じたばた)

あ、ああアリカさま!////
き、今日はもう寝ましょう!////
そうしましょう!////
(顔を真っ赤にしてわたわた)
44 アリカ
ん♪流月がそういうなら、いいですよぉ、寝ましょうか♪(ぱ、と流月さんから手を離し
45 流月
そ、それじゃあ、アリカさまはベッドを使われてください…////
私はソファで…
(いそいそとソファの方へ)
46 アリカ
すとぉ〜っぷ(流月さんを、後ろから抱きあげ/ゃ


…流月がソファーでぇ…?
そんなのダメですよー、流月がベッドをつかうんですぅー(ジト眼で見て
47 流月
え、でも…////

……解りました。
アリカさま、一緒に寝ましょう////(爆/ぇ)
48 アリカ
そうですねぇ、そーしましょうかぁ♪(即決/ぇ/抱き上げたままベッドへと流月さんを運び、ベッドに座らせ
49 流月
きゃっ////
あ、あの…アリカさま?////
(もじもじと言い辛そうに)
…えっちなことは、ダメですからね?////(何)
50 アリカ
…してほしいよーに聞こえるのは気のせいですかぁ?(何

……あたしは無理やりなんかしませんよぅ(拗ねたような声音で流月さんの頬をつつき;
51 流月
あ、ご、ごめんなさい////

え、えっと…その、えっちなのはダメですけど…
(アリカさんに向かって両手を広げ)
抱きしめて…眠ってくださいますか…?////
52 アリカ
…お安い御用ですよ流月ぃ…(そっと抱き締めて

さ…横になりましょうかぁ(抱き締めたまま器用にベッドに横になり
53 流月
はい…♪////
(ぎゅっとしがみつき)

えっと…お、おやすみなさい…アリカさま…♪
(そっと頬にキスを)
54 アリカ
あは…♪
…おやすみなさい、流月…良い、夢を(流月さんの額にキスをします


(何か…この二人って平和ですね/ぇ
55 流月
アリカさま…♪
アリカさまも…良い夢が見られますように…♪

【アリサが色々とやり過ぎなので丁度バランスが取れてるのではないかと…(ぇ)】
56 流月&アリサ
(ある夜のこと…/何故かアリサがベッドを占拠、流月はその脇の椅子に座って困り顔)

流月:……あの、アリサ義姉さま?
何で入って来るなり私のベッドで突っ伏してらっしゃるんですか?;

アリサ:…あたしの…

流月:はい?

アリサ:あたしのウサミミマスクが汚された!

流月:…何ですかそれ;

アリサ:あたし(ウサミミマスク)の名を騙ってとある先生に何とかってキャラの服着せたり無断で魔法少女同好会の顧問にスカウトしたやつがいんの!!
うが〜ッ!!

流月:……覚えてないだけでしちゃったとか? そんなことなさるのアリサ義姉さまくらいですし;

アリサ:あたしは気に入った娘しかスカウトしない、自主的に向こうから来るならともかく(きっぱり)

流月:はぁ…そう、なんですか?;

アリサ:そうなの!
く〜や〜し〜いぃ〜っ!!
ぜっっったい赦さんっ!
今度あたしの名を騙ったらシメてやるッ!!

流月:え〜と……何にしても落ち着いてくださいましアリサ義姉さま;
お茶でも飲んで、気を鎮めてくださいませ?

アリサ:……お茶菓子ある?

流月:あはは…;
(苦笑と共に杖をたぐり寄せ)
この間焼いたクッキーがありますから、お茶請けにしましょうか…♪
(台所の方へ…)

アリサ:…あたし苦めの紅茶がいいなー、それかブラックのコーヒー。

流月:残念、今夜は甘い紅茶です♪

アリサ:…Ja,Fraeulein;

(騒がしくも仲睦まじく、夜は更けていったそうな…)
57 アリサ&流月&マナセ&…
・一檎先生を誘ってみた。

「あ、ごめんな〜;
その日、丁度宿直の当番になっとるんよ〜…堪忍な?;」


・流夏先生も誘ってみた。

「合コン?
んなもん行くわけないってば;
何でって?
そんなのあたしが梨夢一筋だからに決まってるじゃん♪」


・苦肉の策で響(my母)を誘ってみた。

「………行く時間、あると思うか」


〜・〜・〜・〜


「というわけで、参加人数が足りません」

「……しょっく」

あたしの言葉に、参加の決まっていたマナセがうなだれる。
急遽決まったこととは言え、これほどまでにみんな予定が合わないとは…響は論外だが(週六でバイト入れるか普通;)。

「…るつき、おねーちゃん…イカナイ?」

「ごめんなさいマナセちゃん…その日は私も先約があるの」

困り顔でマナセを撫でる流月も不参加。

「それに、アリカさまに対して不実なことは出来ませんもの…♪」

「はいはい、ゾッコンってやつね?」

当然です、と答えてお茶を淹れに行く流月。
マナセが杖代わりに手を引いて同行。

「さて、どうするかな〜……ミーナは連れてってもマナセとしか話さない確率高いし;」


――コンコン


「は〜い!
…すみませんアリサ義姉さま、出てくださいますか?」

「うぃ〜」

ベッドから跳ね起きて玄関に向かう。
こんな時間に流月の部屋に来るってことは…アリカちゃんかな?


――ガチャ


「はいはいどちらさま……って」

「ちゃお、アリサ♪
…頼みがあるんだけど…いいかしらん?」

「お姉さまと呼べ、お姉さまと」
58 五十嵐響
夢を見ていた。

流月の様子を見るついでに部屋に遊びに来たら、思った以上にバイトで疲れが溜まっていたらしく、来て早々熟睡してしまった。
…疲労の所為か、随分懐かしい夢に誘われた。

あまり見たい夢ではなかったが。


【暁の明星、白銀の剣(T)】

ミニストリー、某国お抱えの特務機関。
晒すことの赦されない秘中の秘。
最も醜い闇部。
人殺しのるつぼ。

十三色、ミニストリーに選ばれたエキスパート達。
名乗ることを赦されない名無しの集まり。
傷を持った孤児。
殺しのプロフェッショナル。


ミニストリーの十三色サブリーダー、白銀の狩人。
それが、響のもう一つの名前だった頃の物語。

〜・〜・〜・〜

「ようやく揃ったね、十三人♪」

「はしゃぐなクリス、忙しいのはこれからだぞ」

「もう…響はすぐやる気を削ぐこと言う〜;」

むっつり顔の女が、クリスと呼ばれた女をたしなめる。

…ああ、あのむっつりは若い頃の響か。
と言っても五年くらい前…か?

自分を客観的に見るのは不思議な感じだな。


「二人とも、仲良くしなきゃだめよ?」

二人より歳上の女性の手が、若い二人を落ち着けるように頭を撫でる。

―――――キリエ。
59 五十嵐響
十三色のリーダー。
若くして剣聖と呼ばれた女傑。
……響が護れなかった友。

「キリエ♪
大丈夫?疲れてない?結果はどうなった?休まなくていい?誰がリーダーになった?」

「労るか疲れさせるかどっちかにしろ」

「いいのよ響、私も早く会議の結果を伝えたいし…♪」

微笑みを浮かべるキリエに、あの頃の響は顔も知らぬ母の姿を重ねていた。

優しく、強く、美しいキリエ。

そのキリエの横顔を、頬を上気させ、潤ませた瞳でそっと見つめるクリス。

クリスがキリエのことをどう思っていたか、鈍い響でも十分に理解出来ていた。

「まずはリーダーね?
…恥ずかしながら、私がリーダーの【黄金】を賜ったわ;
サブリーダーは響よ」

「やっぱり!
すごいすごい♪
キリエなら絶対出来るよ♪
響はどうでもいいや」

「待てこら」

…舌を出して悪戯っぽく微笑むクリスに、響はよくからかられていたなと思い出す。

「あと、リーダー以外の【色】は好きに決めていいって。
上も適当ね;」

「あ、じゃあわたし赤がいい!
何よりも深くて、夕映えより赤い【紅】♪」

「なら…響は灰色で」

響がそう言った途端、二人に苦笑いされた。

「灰色って…相変わらず響って老けt」
60 五十嵐響
「いい色だろうが。
白になれず、黒であることも出来ない、中途半端な響にぴったりだ」

遮るつもりはなかったが、響の言葉にクリスが圧し黙る。
…正直、気を遣われると余計疲れるんだが。

「……決めたわ。
響、貴女は【白銀】を名乗りなさい」

響に視線を合わせてくるキリエ。
キリエはたまに強引なところがある。

「銀…灰色みたいなものだろう」

「リーダーが金なのにサブリーダーが灰色ってあんまりじゃない;
…それにね響、貴女はどちらにもなれないわけじゃない。
どちらにでもなれる、可能性を秘めてる。
灰色は、黒にも白にもなれるの」

可能性、か―――。

確かに、可能性に溢れていた。

過去の響たちは。

「……解った。
ならば、響は今日より【白銀】を名乗ろう」

「きまりね…♪
じゃあ…響、クリス、手を出して?」

言われ手を出すと、クリスの手に重ねられ、その上からキリエが手を重ねる。

「私たちは生まれが違って、歳も違う…けど目指すものは同じ。
より良い世界を作るために、無くしてしまった幸せを取り戻すために…
正義の味方なんて贅沢は言わない。
悪を倒す悪になろう」

クリスが微笑みで応え、響も力強く頷く。

例えただの小娘でも、後ろ指を指される人殺しでも……きっと世界を変えられる。
望む幸せを手に入れられる。
人並みの人生を、また送ることが出来る。


―――少なくともあの頃の響たちは、そう信じていた。
61
――人間誰しも不幸を背負い生きている

今更不幸自慢などする気もないが


こんな理不尽が赦されてたまるものか


【暁の明星、白銀の剣U】

―…では噂は本当か…?―

―『トーテン・シュティレ・アウゲン』、まさか実在したとは…―

(……うるさい……)

―その眼光はいかなる殺意・害意をも弾き返す……理解るか? 自分を殺そうとする相手は【視る】だけで殺せる…―

(…うるさい……)

―あんな子供が……恐ろしい……―

(うるさい…うるさい…うるさい…!)


――ガチャッ

「邪魔するぞ」

(…!)

ぶしつけに部屋に入ってきた人物を反射的に【視そう】になり、慌てて毛布にくるまる。

(【視ちゃ】いけない…わたしは誰も【視ちゃ】いけない…)

「…そう警戒するな、何もしない」

ベッドに座る気配、と同時に頭を撫でられる。

「ここは窮屈だろう。
引越すぞ、今すぐ。」

(……?)

連れ出してくれると言うのか、この牢獄のような部屋から。

(………)

どんな人だろう?
優しい人だろうか?
ここの研究者たちと違って。
淡い期待を持って顔を盗み見ようと

――ぺろん

「………っ////」

毛布をめくられてしまった。
62
「ようやく顔を見せてくれたな」

慌てて顔を隠そうとするも、両手で頬を挟まれ、顔を覗き込まれる。

「キュート、可愛らしいフロイラインだ」

さっきから英語とドイツ語の入り混じった滅茶苦茶な喋り方で話かけられている。
多分意図したものではなく、わたしと話すためにドイツ語を勉強してくれたのだろう。
何故かそんな気がした。

「ナーメ、名前は言えるか。
ビーハイセンジー……だったか」

「………マナセ、いっひ、マナセ」

「良い名前だ。
響は五十嵐響、今日からマナセのお母さんになる」

ここに連れて来られて最初に発した言葉は、二人目のお母さんへのごあいさつ。
63
「おかえりなさい…って、あら?」

居間に入ってすぐ、窓際で本を読んでいたアリサが目を丸くして響を…正しくは響の後ろのマナセを見る。

「アリサ、紹介する…マナセだ。
今日からうちの子になった」

響の後ろに隠れるマナセの背中を押すが、必死に響の服を掴んで前に出ようとしない。

「……そうですか」

アリサは読んでいた本を閉じ、マナセに近寄るとしゃがんで視線を合わせる。

「私はアリサよ。
よろしくね、マナセ」

そう言うと、気品さえ漂って来そうな優しい笑顔を浮かべた。
が、響の方を向くとすぐにいつもの興味無さげな顔になる。

「…響、空いてる部屋に案内すればいいんでしょう?」

「そうしてくれ。
あと…家に居る時くらい、母と呼んでくれないか」

「考えておきます、‘響’」

そう言うと、マナセを伴い去って行く。

「考えておきます…か」

一年経っても答えは変わらないらしい。

詳しい事情は何も聞かないが、来る者は拒まない。
その代わり、例えどんな理由があろうと去るならば追わない。

それがアリサのルールだった。
深く立ち入らない代わりに自分も晒さない。
そうすることで自分を守っていたのだろう。

……今はその頃の面影も無いが。

「母さま…お帰りになられたのですか?」

かけられた声に振り向くと、流月が杖をつきながら居間に入って来るところだった。

「ああ、ここにいる。
ただいま流月」

近寄り頭を撫でると、微笑みながら響の顔を見上げる。

「おかえりなさいませ、母さま。
すぐにお食事、ご用意致しますね?」

「ああ…。
森羅とエリチェはどうしてる」

ひょこひょことキッチンに向かう背中に問いかける。

「シンラ姉さまは今朝からお仕事でパリに…エリチェ姉さまは訓練でお疲れみたいで、もうおやすみになられました」

「そうか」

――帰ってすぐにしようとしていたマナセの歓迎会は、森羅の帰国を待ってからになったんだったな。

昔の自分の残念そうな顔を見つつ、そんなことを思い出していた。

「響はまだアリサに嫌われているらしい」

「まあ…何故そのようにお思いに?」

「色々あるが……第一に好かれる理由も見当たらん」

ご冗談ばっかり…と、温めたシチューを持って流月が戻って来る。
64
「アリサは昔に比べ笑うようになった。
が、一度として響に笑いかけたことが無い」

「照れてらっしゃるのですよ…アリサ姉さまは照れ屋さんですもの」

響の前に食事を並べ終わり、向かいに腰掛ける流月。

「あと…甘えてらっしゃるのかも」

「甘える、か…縁遠い言葉だ」

「そんなことございませんよ?
アリサ姉さまはあの通り、ドライな方ですけど…響母さまなら、愛想笑いなどしなくともそんな自分を解ってくれる。
自然のままを許してくれると甘えてらっしゃるのです」

「そんなものか」

「そんなものです」

悩みながら、シチューに口をつけた。

「あとは…ちゃんと時間を作ってアリサ姉さまご本人とお話しくださいまし?
お二人とも、お仕事だなんだと理由をつけてお逃げになってばかり」

「……辛口だな」

「あら?
味付けを間違えましたかしら…」

「…コメントが、な」

そんなことを言うと、どちらからともなく笑い出した。


家族を愛し、守り、慈しむ。
あの頃の響は、ひたすら『キリエ・ジェレミアン』になろうとしていたのだ。
65
一人の母親がいた

その母親には娘がいた

母親は、真に娘たちを愛していた

【暁の明星、輝ける光の剣V】

――はじめまして、ミル…わたしはセキト。
きょうからあなたのお母さんになるんだ…♪――

――枝葉、夏葉…♪
お母さんですよ〜…♪
…あ、笑った…♪
見た?
ミル…この子たち笑ったよ…♪――

――いやっ!
連れていかないでっ!!
枝葉や…夏葉は…っ、そんなことのために生まれたんじゃない…!!――

――ミルとワルプルギスも…凍結処分…!?
枝葉も夏葉も…実験のせいで消耗してる…――

――…そうだ、ミルとワルプルギスの細胞をあの娘たちに…――

――ミルはきっと怒るよね……二人を正真正銘の兵器にする、なんて…――

――ねえ、ミル…わたしはきみのために何もしてあげられなかったけど…
お願い…あの娘たちを…枝葉と夏葉を、お願いね…?――

――お願い、ミル…あの子たちに、幸せな未来を…――
66
「…ようやく起きたか」

「響…今日も来てたの…?」

見舞いに来たというのに、ひたすら眠っていた紫…セキトがようやく目を開ける。

「ふふ…♪
こんな『ビニールハウス』に毎日来てくれるのは、響くらいだ…♪」

体を起こすセキトに肩を貸してやる。

味気ないぐらいに真っ白な部屋。
ベッドの天幕のようなビニールは、余計な雑菌を入れないため。

彼女の才能に嫉妬した頭でっかちの科学者たちが、この部屋に付けたあだ名が『ビニールハウス』。

生まれつき体の弱いセキトには、外の空気も毒でしかない。

天才にして十三色の『紫翔翼』、セキト・ランツクネヒト。

今年28を迎える年長者で能力も十分にありながら、体のハンデのため幹部の座にも縁の無い、飛べない非運の翼。

それでも、いつも響たちをそっと支えていてくれた優しい人。

「…娘たちの夢を…見てた…」

どこか遠くを見つめ、ぽつりぽつりと語り出す。

セキトには娘がいた。
組織が長い間保管していた白炎獣と、実験で造り出された人工生命体が二人。

体の欠陥から人工生命体たちは失敗作と呼ばれたが、セキトは決して見捨てなかった。

あまりに強すぎる力のために封印されていた白炎獣を、セキトは見捨てなかった。

だが、セキトは娘たちと引き離された。

人工生命体たちを改めて兵器として運用する案が施行され、白炎獣は再封印という体で廃棄が決定したのだ。

兵器として扱われぼろぼろになった二人と、凍結され最早物言わぬ白炎獣を前に、セキトは一つの罪を犯した。


白炎獣ともう一体の魔物の細胞を使い、人工生命体を強化すること。


確かに、その結果生命体たちは体の欠陥を解消した。

白炎獣も、廃棄と偽りセキト自身の手引きで遠方の国の信頼の置ける施設に身柄を移した。


だが、彼女がそうして守った最愛の娘たちは、その事実を知らないまま。


生命体たちは彼女を恨むだろう。

己を兵器にしたセキトを。

白炎獣は恨むだろう。

愛しい姉妹を兵器に変えた母を。


それでもセキトは、この不器用な女性は、ただひたすらに娘たちの無事を、幸せを祈っていた。
67
「…お前は不器用だ、セキト」

「仕方ないよ…♪
わたしは響ほど器用じゃないし…キリエほど強くもない…元々、母親になんてなっちゃいけなかったんだ…」

泣きそうな笑顔でそう言うセキトの頭に、チョップをかましてやった。←ちゃんと加減したぞ?

「…母親になってはいけない女がこの世にいるものか。
頭がいいとそんなことも解らなくなるのか」

「……ごめん……♪」

苦笑しながら、頭をさする。

涙を堪えても、きっと響がいなくなってからお前は泣くんだな、セキト。

たった一人、こんな『ビニールハウス』の中で。


願わずにはいられない。
セキトの娘たちの幸せを。

祈らずにはいられない。
セキトの想いが報われ、思い切り泣くことが出来る居場所が出来ることを。

叶うなら、いつかセキトと娘たちがまた一緒に暮らせますように。


「響はそろそろ行く。
これ以上居たら、体に触るだろう」

「大丈夫だよ…?
マスクを着けてれば、だけど…♪;」

「…いいから寝てろ。
今度来る時には、土産話をもっと用意しておく」

「解った…」としぶしぶベッドに潜るセキトを見て苦笑する。
どっちが年上だ? まったく…♪

「響…?」

「何だ」

部屋を出ようとしたところを呼び止められ、振り向く。

「キリエのことなんだけど…」

「キリエがどうした」

慎重に言葉を選んでいるセキト。
やがて、その口が開かれ――
68
何を言ったか解らなかった。
…5年前の響はそんな顔をして立ち尽くしていた。

気持ちは解る。
5年経った今の響にすら、未だ心を激しく揺する言葉だったから。


キリエの元へ走る。
セキトの言葉の真偽を確かめに。

セキトの口が嘘など語らないことを知っているのに、必死で間違いだと自分に言い聞かせて。


「響…?
どうしたの、そんな怖い顔して?」

場面は変わり、キリエの部屋のバルコニー。
立ち尽くす5年前の響が、震えながら言葉を発した。


「――心臓病だと、セキトから聞いた」


――キリエは隠してるけど…あの咳、声の掠れ……
…多分、もう長くない…――


「さすがに、セキトは誤魔化せなかったわね…;
他に何か聞いた?」

「……あと一年もてば、いい方だと」

「一年、か〜…」

手摺に掴まり、空を見上げるキリエの顔つきは、死に恐怖するものではなく、

「短いな…そう思わない?
ようやく十三色の活動も軌道に乗って、これからって時なのに」

「言っている場合かっ!?
入院しろ! 今すぐ!!
嫌だと言ったら無理矢理引きずって行くぞ!?」

「怖いな…;
…無駄だよ。
もう治らない。
自分の体だから、解る」

何故そんなことを言う?
何故諦める?

希代の天才剣士。
最強の剣聖。
不可能を可能にする黄金。

ずっと憧れていた。
だから、そんな言葉を聞きたくはなかった。

「泣かないでよ、響…。
響は強い子でしょ?」

「…何故笑っていられる…?
何故、諦められる…?」

「…諦める、とはニュアンスが違うかな?
ただ、運命は変えられないから…だったら、黄金は最後まで輝くことを選ぶ」

「クリスは…クリスはどうなる…?
あいつは、あいつはお前を…!」

「響」

抱きしめられ、言葉を塞がれる。
何も言わなくても、解っていると。

「病気のことは誰にも言わないで…?
セキトには、私から話すから…」

「今から行って来るわ?」と笑顔を残し、キリエは去って行った。


バルコニーにうずくまり、声を押し殺して泣いた

誰か……キリエを助けてくれ……

誰か………響を助けてくれ………


願いは聞き届けられぬまま、あの忌まわしい日がやって来る。
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未だ忘れられないあの日

キリエがいなくなった日

何かが壊れたあの日

【暁の明星、白銀の剣W】

簡単な任務のはずだった。
メンバー七人で反政府組織のゲリラキャンプを襲撃し、殲滅する。ただそれだけ。

それだけのはずだった。

〜・〜・〜・〜

「クリス! キリエ!?」

炎上するアジトの中、仲間を探す。
しかし出て来るのはライフルで武装した敵ばかり。

「く…っ」

スローナイフを喉元に投げ付け、死体を踏み越えて駆ける。
愛用の二本の短剣は血糊を吸わせ過ぎた。
手持ちのナイフが尽きれば、最悪銃を奪って戦うしかない。

――タタタンッ!!

前方、左側の部屋から銃声。
扉を蹴破り、ナイフを構えて踏み込むと、

「―――白銀」

キリエが敵兵を切り伏せ、こちらに目を向けていた。

「黄金、無事か?」

「私は何とか…でも……」

部屋の隅に目を向けるキリエに倣うと、キリエの上着にくるまれ、荒い息を溢すクリスが横たわっていた。
腕や足に巻かれた布切れは血に滲んでいる。

「…紅は私が担ごう。
お前のツヴァイは両手持ちだが、私はナイフだから支障は無い」

クリスを担ぎ上げ、キリエと共に部屋を飛び出す。

「他の者を見たか?」

「蒼と褐色は、翠が連れ出したから無事…。
…紺碧は、死んだわ」

苦虫を噛み潰した顔で告げるキリエ。
響もちっ、と舌打ちする。

「この布陣…最初から私たちが来るのを知っていたとしか思えん」

「ご丁寧にアンチマジックフィールドまで使ってね。」

「…私たちははめられたのよ、上層部のお歴々に」

「そう思う根拠は」

――敵が目の前に飛び出す。

「私たちは――」

しかし刹那、キリエが最小限の動作で剣を振り、横を通過する瞬間に首を落とす。
ツヴァイハンダーは長さ約2メートル、重量5キロ弱の業物だが、キリエは枯れ枝を振るっているかの如く余裕に扱う。

「強くなり過ぎた。
彼らは、私たちがいずれ組織を乗っ取ると心配してた…だから、こんなっ!」

忌々しげに剣の血を拭う。
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上層部の気持ちは解らないでもない。
基本構成員のほとんどが十四、五歳の小娘たちの十三色が今やミニストリー随一の実力者たちとして君臨している。
異常と言ってもいいだろう。
だが、

「――これが小娘への仕打ちかッ!?」

クリスを担いでいない方の手でナイフを投げつける。
狙い通り、廊下から飛び出して来ようとしていた敵兵の胸にナイフは吸い込まれていった。

「防火扉二枚でも貫通出来るマシンガンにHKの45口径…明らかにゲリラの装備ではない…っ!」

「横流ししたのはミニストリー、か……げほっ」

膝をつき、咳き込むキリエ。
口を押さえようとする手に、隠しきれないほど血が飛び散った。

「黄金…!」

「……幕引きね。
殿は引き受けるわ」

大剣を携え、響たちに背を向けたキリエ。

己の死期を悟った故の勇気ある行動?
否、それは仲間を助けるため、最後の命までも捧げようとする祈りにも似た決意。

黄金として輝く最後の時。

手負いのクリスを連れての突破はし難い、籠城するにしてもここはいずれ燃え堕ちる。

一人が残り敵を引き付け、その間に二人が突破する。

たった一つの冴えたやり方。

故に響のとるべき決断も一つ。


「…すまんキリエ、またな…」

「ええ、先に行ってるわ…♪」


「響もしわくちゃのおばあちゃんになってからいらっしゃいな」と付け足し、キリエは後ろ向きのまま手を振った。
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作戦中にコードネームでなく本名で呼び合うなど本来あり得ないことだが、それさえも些末事だった。

クリスを背負う手に力を込め、走り抜ける。

「ひ…響…?」

背中のクリスが目を覚ます。

「喋るな、舌を噛む」

崩れ落ちる瓦礫を払いのけ、走る、走る。

「キリエは…キリエはどこ…?」

「………」

無言で首を振る。
クリスの体が一瞬震えた。

「…戻って…戻って!
キリエ、キリエ!!」

「喚くな…わきまえろ!」

「嫌だっ!
戻れ! 戻れっ、戻れ……戻れよぉ…響…っ」

弱々しく響の背中を叩く手、首筋に流れ落ちて来る雫に、かけるべき言葉は見付からず、噛み締めた唇から血を滲ませて走り続けた。


その後、アリサたちに助けられて響たちは事なきを得た。

だが、燃え堕ちたアジトで見付けられたのは、地面に突き立った大剣が一本だけ。

結局、彼女が敵の凶弾で倒れたのか、病で息を引き取ったのか、そのまま炎に身を焼かれ散っていったのかも解らぬまま。

彼女のツヴァイを胸に抱き、ひたすらに泣き叫ぶ少女の背中を、響は黙って見つめていた。


その日、剣聖と呼ばれた女性は、果たすことの叶わなかった理想を胸に抱いたまま散っていった。
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止まない雨は無い

明けない夜は無い

たゆまず歩もう、その一歩を踏み出して


【暁の明星、白銀の剣X】

「………」

僕は一人。暗い部屋に一人。

「キリエ…」

返事は返らず、僕は一人。

「…………」

涙が零れ、僕は一人。


「…クリス?」

躊躇いがちに部屋に足を踏み入れたミーナは、照明の消えた部屋の中でクリスを探す。

「………」

「そこか……、いい加減部屋から出て来いよ。
みんな心配してるぜ?」

部屋の隅でぼんやりと宙を見つめるクリスの隣に腰を下ろし、優しく肩を抱く。

「キリエ……いないんだ」

「………」

「いない…いない…」

ミーナにとっても、己のマスターであるキリエの死は耐え難いものだった。
本来なら彼女を守り死ぬのが自分の使命だった。

それでも、生き恥を晒しているのはクリスのため。

本当は活発なくせに、好きな相手の前では猫を被って気を引こうとする淋しがりのため。

「……マスターの…キリエの代わりにはなんねぇけどさ、あたしが…いるよ…元気出せよ…」

ぽんぽんと肩を叩く。
気のきいた言葉の言えない自分が、ミーナは憎かった。

「……うん、元気出す」
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こくん、と機械のように首を振るクリス。
ミーナには、もはや抱きしめることでしか言いたいことも伝えられず。

「…約束、だかんな?」

「…うん」


「……必ず蘇らせるよ、キリエ……」


クリスの見つめる方向、自分の背後に揺らめく闇に気付くことはなかった。
黒は、少女に語りかけるようにもう一度揺れた。


「…本当に行くのか」

「しつこいよ響…;
大丈夫大丈夫、簡単な任務だし、日本はいいとこらしいしさ?」

旅行鞄を一個だけ担いだアリサが、響の言葉に苦笑する。

キリエがいなくなってから、色々あった。
響がリーダーとして十三色を再建し、マナセがメンバーに加わり、いくつかの季節が過ぎて……アリサが任務で日本に渡ることになった。
時間的期限が設けられていないこの任務に一番反対したのは……

「アリサ姉さま…」

すんっ、と鼻を鳴らし流月がアリサにしがみつく。
アリサがいなくなれば流月は悲しむ。

「…お仕事頑張って来るから、家で待ってな?」

「………はい………」

しかしアリサは一度だけ流月の頭を撫で、そのまま歩いて行った。


「……響母さま、パスポートとはどこで貰えるのですか?」

勘弁してくれ。
77
「響母さま、響母さま起きてくださいまし?」

「ん……?」

体を揺さぶられているのに気付き、目を開ける。
流月が困ったような顔をして響の顔を覗き込んでいた。

「ああ良かった、起きてくださらなかったらどうしようかと…お電話ですよ?
ドイツからです」

ほっとした様子で電話の子機を握らせてくる流月。
そこでようやく流月の部屋で寝ていたことを思い出す。

「すまん、すっかり寝入ってた」

「いえいえ…♪」と微笑みながら席を外す流月。
ドイツからということでミニストリー絡みだと察したのだろう。
昔から気の付く娘だ。

…子機から怒鳴り声のような音が聞こえる。
どれくらい待たせたのか知らないが、さすがに国際電話をこれ以上待たせてはまずい。

凝った体をほぐしながら電話を耳にあてた。


「Tag?」

『響か?
いつまで待たせる気だ!?』

「…カリカリするなクリス。
何か用か?」

『ああ……クリスマスはどうするんだ?
森羅はこっちでパーティに参加してくれるそうだが…』

ああ、クリスマスのやつか。とわざわざ出欠を確認する律義なクリスに苦笑する。

「新年もこっちで迎えるだろうな。
莱香もいるし」

『あっそ…;
じゃあ電話代が勿体無いから切るぞ?』

「ああ、待てクリス」

「何?」と言葉を待つクリス。

あんな夢を見た後だから、つい聞きたくなった。

「今、幸せか?」

『………多分、ね…♪』

一瞬の沈黙と、苦笑する声。
受話器の向こうからはかすかにキリクの声も聞こえる。

「………ならいい、その内また顔を出す」

そう言って電話を切ると、またベッドに寝転ぶ。

キリエ、随分遠回りだったが…ようやく響たちは幸せになれたよ。

……いや、皆で頑張っていたあの頃から…きっと幸せだったんだろうな。


「あ、響母さま!
寝てばかりいらっしゃらないで起きてください!」

ベッドから叩き落とされた。

…五十嵐家は今日も平和だ。
78 アリサ
アリサ:えー、毎度お騒がせのアリサでございます。
今回は愛しのハニィへの気持ちを歌ってみました…キャラソンの延長だと思ってください♪

【Everyday Everynight〜feat.アリサ〜

(本来の歌い手、小山力也様…ネオロマ系ゲームでのキャラソン)

『Everyday Everynight
そして貴女の照れる顔見て微笑んだ
Everyday Everynight
恋と呼ぶには結構チープな話でしょ?

強気な態度、隠す愛情 無邪気な眼が
何故か『貴女』と、似てる表情 ヤバい感じ

ホントのあたしを 貴女に見せてもいいかな?

Everyday Everynight
そして貴女を檻の中に閉じ込めたい
Everyday Everynight
恋と呼ぶには全然馬鹿げたキモチだね?

Everyday Everynight
汚れを知らぬ貴女に触れられはしない
Everyday Everynight
そんな話で不様なあたしを見せようか?

Everyday Everynight
そしてあたしの肩に寄り掛かって見せた
Everyday Everynight
貴女の笑顔きっとあたしが守るから』


流月:アリサ姉さまったら…私の部屋だということ忘れてらっしゃいますね?

アリサ:ゴメンナサイ;
…チハちゃん聴いてる〜?
あ・い・し・て・る・よ〜♪

【小山力也さまのキャラソンを聴いて「あ…今のアリサの心情にジャストになりそうな歌♪」と思って替え歌してしまいました…すみません;
もしかしたら、他のキャラでもやってしまうかも…(ぁ)】
79
(某日)

響:…では、クリスは日本に?

電話の相手:『その可能性が高いかと…管轄内にある施設の監視カメラに、ポケットマネーを日本円に換金しているところが録画されてましたし』

響:やつにしては詰めが甘い…いや、堂々としてあいつらしい、か;
…で、ほとんどのエージェントが日本に来たことになるが組織の運営は大丈夫か?

電話の相手:『当面は森羅さん、キリクさんで何とか…暗殺の仕事は廃止しましたから手は足りてますわ。
私の方は書類仕事が激、激激激激っ!…激増しましたけど?』

響:……学校の番号を教える、手が回らん分はFAXでこちらに回せ;
用務員さんがマブダチだから話を通しておく。

電話の相手:『何とお優しい!
さすがは響さんですわね♪
けど、何故ご自宅の番号じゃありませんの?』

響:響の電話は昔懐かしい黒電話だが?

電話の相手:『失礼を致しましたわ…;
…それで、クリスさんのプチ家出の理由なんですけど…心当たりはございます?』

響:ぷち…っ?;
……他に言い様は無いものか…;
…まあ、多分だが…あるにはある。

電話の相手:『そうですか……。
では、クリスさんのことはお任せしますわ?
あの方、普段は威張り散らしやがってらっしゃるのに激世間知らずで激寂しんぼの激お嬢ちゃまですから、今頃ならず者の手にかかってお持ち帰りされやがってるかもしれませんし♪』

響:鬱憤、相当溜まってるな…;

電話の相手:『そりゃそうですよぉ!?
クリスさんったら、私が幽霊だから疲れないなんて激偏った言い分で昼も夜も書類仕事書類仕事書類仕事……おかげさまで私の私室は激書類だらけなんですのよ!?
ベッドまで埋まって危うく寝てる間に見積もり報告書に憑依してしまうところでしたのよ!?』

響:響のせいじゃないぞ?;
あいつを甘やかしたのはキリエだからな?;

電話の相手:『それは解ってますけど〜…?
…嗚呼、あの方に小指をテーブルの角で激強かに打ち付けるとかの災難が降りかかりませんかしら?』

響:スケール小さいなぁ、おい;
…とにかく、もう切るぞ?;

電話の相手:『あ、最後に…!
…そちらの学園に姉上さまがいらっしゃるのでしょう?
よろしくお伝え…願えます?』

響:…悪いが、「碧」は組織とは完璧に決別してる。
響も一度話はしたが…それっきりだ。
「学園で昔の話はしないでほしい」と。
80
電話の相手:『……そう、ですの…』

響:…あとは…「白」?
お前に一言…「本当にごめんなさい」、だと。

白:『………、姉上さまったら…っ』

響:…察してやれ、実の妹を地縛霊にして自分だけ助かってしまった、あいつの気持ちも。

白:『……解りましたわ…。
けど、激収まりつかないくらい腸が煮えくり返ってますのでその内迎えに行きます』

響:……お前、地縛霊だろ;

白:『姉妹の愛をもってすれば超自然的法則すら激簡単にぶっちぎりですわ♪
…では響さん、激体に気を遣っちゃってくださいね?』

響:そうする…では、な?

(がちゃん!)

響:……今のクリスが思い悩むとしたら、響が原因…か。
だが…響が行ったところで(トゥルル、トゥルル)…電話が嫌いになりそうだな;
もしもし?

マンソリ:『やあ、やっぱりこっちか♪
自宅にかけても繋がらなかったからこっちだと』

響:切るぞ?

マンソリ:『待った待った。
…気が短いと嫌われるよ?』

響:…用件を言え、手短に、十字以内で。

マンソリ:『い・や・が・ら・せ♪』

響:切るぞ?

マンソリ:『ストップストップ。
…解った本題に入ろう、今クリスを探してないかな?』

響:…知ってたか。

マンソリ:『ん〜…偶然?というやつかな?
たまたま見かけてね?
居場所を知りたいと思ってる?』

響:ああ、もちろん。

マンソリ:『そしてその報酬として今穿いている下着の色を告白してもいいと思ってる?』

響:何故だ。

マンソリ:『え、形まで教えてくれるって?』

響:話聞け、アンテナ付きインド人(電波的な意味で)。

マンソリ:『解った聞こう!
そしたら教えてあげるから!
テルミープリーズっ♪
テルミープリ』

響:切るぞ。

マンソリ:『ウェイトウェイト。
…廃墟の辺りだったかな?
ディー君と一緒にいるとこを見たよ。
ほら、エリチェのお嫁さん♪』

響:ディーちか…なら安心だな。
信頼が置ける。

マンソリ:『ところで、教えたんだから下着(がちゃんっ!!)』

響:…あいつ、だんだんアリサに似てきたな…;
……ひとまずディーちに任せるか。
響は疲れた…;

流月:あら…?
響母さま、お帰りですか?

響:ああ…;
また来る;

流月:はい、おやすみなさいませ…♪
81 アリサ&響&流月
アリサ:気まぐれラジオっ、in流月の部屋〜♪
いぇ〜い♪

響:順当にいけば十四回目…だったか?
ちなみに流月の部屋ということで、ゲストは必然的にポスト腹黒のこの人。

流月:どうも〜、ゲストの流月です;
お二人とも、あまり騒がないでくださいね?
特にアリサ姉さま。

アリサ:気をつけなよ響?

響:お前だお前。
82 アリサ&響&流月
流月:ところで…何で私の部屋なんですか?;

アリサ:ん?
…………何て言うか、気分的に?

響:深くは聞くな。

流月:…凹んでるからってわざわざ私の部屋に溜まらないでくださいまし;

アリサ:固いこと言わな〜い♪
さて、今回のお題は?

響:…【取ってつけたようなキャラコンセプトに触れてみよう】のコーナー。
取ってつけたんかい;
83 アリサ&響&流月
アリサ:まずは枝葉ちゃん&夏葉ちゃん♪
…この二人のテーマは【対極】だったっけ?

響:似ているが決して同じ足り得ない。
しかしそれ故に…隣同士のパズルピースのように固く結びつく、と。

流月:まあ、当初から言えば随分キャラの内面は変わってらっしゃいますよね?

響:当たり前だ、誰だって成長するんだから。
84 アリサ&響&流月
響:そういえば、アリサのコンセプトは【外面の良いリアリスト】だったか?

アリサ:え゛、マジすか;

流月:人付き合いが上手なくせに、本当の意味で心を許せる人にしか甘えられない。
ロマンチストなくせに夢を見ることを否定するリアリスト気取り。
…ふふ、可愛い…////

アリサ:どこが?////
どこが可愛いって?;////
85 アリサ&響&流月
流月:で、響母さまのコンセプトは…【どこかが欠けてる完全無欠】?;

アリサ:完全じゃないぢゃん;
何でも器用に出来るし、自分の性格を把握してるけど、元から欠けてるものは埋めようが無かった…ってさ?

響:素敵な誉め言葉だな、聖人君子よりは努力し甲斐もある。
86 アリサ&響&流月
アリサ:流月のコンセプトは…【触れられる優しさ】?

響:結局のところ感情や心など、人が伺い知ることは出来ん。

流月:だけど、見えなくても触れられる、そこにあることが解る…♪
素敵なことだと思いませんか?
87 アリサ&響&流月
アリサ:クリスのコンセプトは【若者の特権】って何じゃこりゃ?;

流月:クリスさまには響母さまに対する劣等感、のようなものがくすぶってらっしゃるのです。
何でも出来て将来を見据えている響母さまに比べ、自分は出来ることも目標も無い…って。

響:そういうことを言えるのも若者の特権だ。
これから足掻いて、望む未来を手に入れられることさえ…な?
88 アリサ&響&流月
アリサ:さて、じゃあここらで次のコーナー行きますか?

流月:次は…これから登場予定のサブキャラの方について…♪

響:待て、うちのバカ(PL)はまだキャラ増やす気か?;
89 アリサ&響&流月
流月:何でも、新キャラさんはPLさんの分身という予定だそうですよ♪

アリサ:その情報だけで嫌な予感抜群なんですが;

響:このキャラのコンセプトは【一匹狼】だそうだ。
折尾瀬とも五十嵐とも関係ないキャラという設定で孤独感倍増、決して人付き合いは悪くないが甘え下手……何だ、性格はアリサに似てるな。

アリサ:そりゃそうでしょ? あたしPL似だし;
90 アリサ&響&流月
アリサ:というかこのキャラはほんとに参加決定なわけですか?;

響:さて…まだ名前も決まってないみたいだしな。

流月:折尾瀬家とも五十嵐家とも関わり合いのない方ですから、正真正銘新規開店な気分になっちゃって世に出すのを恐れてるようですよ?

アリサ:意味が解るような解らんような…;
な、仲良くしてもらえるといいなぁ…ってことで?;
91 アリサ&響&流月
流月:まあ、新キャラさんについてはPLさんの今後の妄想次第ということで…♪

アリサ:よしっ、では締めに入る前に…フレーっ、フレーっ!
わ、か、も、の!
頑張れ頑張れ若人っ、頑張れ頑張れ無理するなっ!
頑張れ〜♪

響:……それは?

アリサ:…悩み多き若者へのエール////
92 アリサ&響&流月
アリサ:ではでは今夜はこの辺で!

響:次回はいつもの裏路地で会おう。

流月:ゲストは私流月でお送りしました♪

三人:『See you next time♪』
93 アリサ&響
【極秘会議中】

アリサ:……マジでやるの?////

響:言ったからには有言実行。

アリサ:いやいやっ、絶対需要無いし!////

響:チハっちは物凄く欲しそうだったろう?

アリサ:…ほ、ほら作るお金も////

響:ひたすらアルバイトしてる響を舐めるなよ。
製本はミニストリーで頼めばいいだろう。

アリサ:……古巣にまで恥を晒すのか…;////
…あーっ!!
もう解ったよやればいいんでしょ!?////

響:その意気だ。
じゃあ早速表紙用に…ほら、ポーズとれポーズ。

アリサ :いきなりかい////
…こ、こんな感じ?;////

響:もう少し楽しそうにすればいいだろうに?

アリサ:恥ずいんだって;////
…早く撮ってよ?////

響:解った。
…はい、チーズ。


(ーカシャッ)
94 アリサ&響
【プロジェクト実行中】


アリサ:く〜……んっ。
ふああああぁぁぁ…;
…あ、撮影しててそのまま部屋に泊まったんだっけ;

(ーカシャッ)

アリサ:って何撮っとるか!?////

響:何って…寝起き?
一部のファンが喜ぶかと。

アリサ:こんな格好を皆様に晒せと!?////
…はぁ;
せっかくだからもっと格好いい写真撮りたいなぁ…;

響:じゃあ次はそういう路線でいくか。
さあ、今日も頑張っていこう。

アリサ:うぃ〜;
…ねえ、今の写真マジで使うの?;////
本気?;////

響:諦めろ〜。
95 アリサ&響
【プロジェクト実行中〜その2〜】

アリサ:……響、この衣装なんだけど…;

響:何だ、マイドーター?

アリサ:…いくらあったかくなってきたからってへそ出しはちょっと…;////

響:我慢しろ、へそくらい。

アリサ:それにあたしミニスカートとか久しぶりに穿いたんだけど?;////

響:響も滅多に穿かんな、そういうのは。

アリサ:あと、メイクまでする必要はあったのかなぁと;////

響:いいと思うぞ?
普段と違う魅力にドキっ、というやつだ。

アリサ:…確かにかっこいいの撮りたいとは言ったけどさぁ…////

響:いつまでも文句言ってるな。
撮るぞ〜?

(ーカシャッ)
96 アリサ&響
【プロジェクト実行中〜その3〜】

アリサ:遂に四枚目撮っちゃったね〜♪
しかもエルちゃんとツーショット!
確かあと二枚くらいだっけ?

響:それはいいんだがな、アリサ。
この写真……

アリサ:んぁ?
何だいマイマザー?


響:………これはセクハラだろう?


アリサ:…………はい?;

響:図々しく寝たフリなんぞしおって…このエロめ。

アリサ:いやいやいやいやいやいやっ、どこが!?
ねえどこがセクハラ!?;

響:まず、言うに及ばず左手な?
それと右手。
これがだんだんとこうエルっちの方に向かっているような気が

アリサ:解った! 最悪左手のおイタは認める!
けど右手には何の罪もありません冤罪ですっ!!;

響:まだしらを切るか、このエロエロめ。
大事なことだから二回言ってみた。

アリサ:だからあたしは無実だってっ!?;
カメラマンに聞いてみてよ!

響:ではカメラマン、発言を。


マナセ(当日のカメラマン):前から、いつかヤラカス、思てました。


アリサ:マーナーセーっ!?;
97 アリサ&響
【プロジェクト実行中〜その4〜】

アリサ:何とか五枚目…撮影完了;
残り一枚〜;

響:いちはっちに可愛い衣装を着せてあげられて良かった。
…しかしちょっと待て。

アリサ:何か?

響:このリボンは何だ?

アリサ:………おっきくて可愛いリボンが、頭と胸元に飾られてるね?

響:そっちじゃない、というか今明らかに目を背けたろう。
…いちはっちを拘束するように体に巻きついてるリボンのことだ。

アリサ:………あたしは何も見てないよ?;

響:写真で隣にいるくせに何言ってる。
しかもお前のこのポーズは何だ?

アリサ:………見なかったことにしていただけませんか?;////

響:いや、無理だろ;
アリサ…セクハラもいい加減にせんと母は怒るぞ?

アリサ:いやっ、待ってって!;
あのポーズと設定指定したのはカメラマンのマナセで


マナセ:アリサ姉の部屋から、イヨーに長いリボンを押収しますた。


アリサ:マーナーセーっ!?;
98 五十嵐家オールスター
【新規プロジェクト、緊急会見】


ー写真集に引き続き、遂にゲームの発売が決まりましたが今のご気分は?

アリサ:わりと鬱です;
と言うかほんとに買う人いるの?;
需要がないと思ってた写真集がちびちび売れてるのはびっくりしたけど;

ー連絡先を書かなかったから関係者しか買えなかったそうで…書けばもっと売れたのでは?
今回のゲームは一般で出回るのでしょうか?

流月:残念ながら、またミニストリーにご連絡くださった方のみに販売させていただく形となります;
日本で販売するにはコネが無いそうで…大人の事情ということでしょうか?

ー難しいところですね。
ちなみに、今回のゲームはどういったストーリーなのでしょうか?

エリチェ:今でない時ここでない場所…主人公の女の子は戦争で家を失うんだけど、軍人の家系の五十嵐家に引き取られるの♪
そこでメイドになったり一緒に学校に通ったりして私たちと絆を育むのよん♪

ーつまり、ジャンルは恋愛シミュレーションということになるのでしょうか?

マナセ:ザッツライト。
攻略タイショウはマナセたち全員。
隠しシナリオも充実して遊びゴタエじゅうぶん。

ー発売が楽しみですね。
いつ頃を予定されているのですか?

響:その辺はよく解らんが値段は六千円だそうだ。
高いので無理して買うこたぁない。
パッケージは出来てるから持って来てみた。

ーありがとうございます。
ではパッケージを持って集まっていただいて、最後に一枚…(パシャッ)
今日はありがとうございました。

五十嵐家一同:ありがとうございました♪
99 五十嵐ファミリー
【フルハウス〜五十嵐さんちの場合〜】
役柄:響…ダニー役。辛口で知られる芸能リポーター。妻を亡くし、育児のためD.C.さんとアリサを家に呼ぶ。みんなのおかぁさん。

D.C.さん…ジェシー役。ミュージシャン兼アルバイトの二足のわらじ。つい最近育児係の称号が加わり三足に。

アリサ…ジョーイ役。駆け出しのモデル。周りからはお笑いに転向しろと薦められているムードメーカー。

チハさん…D.J.役。響の娘で一番お姉さん。気丈に振る舞うも年相応に幼い。最近はツッコミに回る回数がとみに増えたとか。

フィンさん…ステフ役。響の娘でみんなを盛り上げるムードメーカー、そして何かと問題を起こすトラブルメーカー。

マナセ…ミシェル役。響の娘でまだ赤ちゃん。小学生並みのスペックを誇るが赤ちゃん。ここ重要。


(マナセの部屋にて/以下、敬称略)


響:眠ぅれ〜、眠ぅれ〜、母〜の〜腕ぇ〜で〜。

マナセ:………。

(ガチャっ)

D.C.:おはよ〜さん;

響:おはようディー、もう昼だがな。

D.C.:悪い悪い;
夕べはライブだったし、それになんか近所から念仏が聞こえてきやがってさ、危うく永眠するとこだったぜ;

響:それは響の子守歌だ(怒/ぁ)
マナセがぐずって寝ないんだ。

D.C.:な〜んだマナセ、お前寝ないのか?
ほぅら俺の美声を子守歌にねんねしな〜♪

マナセ:………?(不思議そうに)

D.C.:…あ〜、マナセ。
良い子はお昼寝の時間だ、お昼寝しないと大人になれないぜ?

マナセ:………。(不思議そうに)

D.C.:…大人しく眠ったら二百円やるぞ? どうよ?

マナセ:………。(不思議そ略)

D.C.:解った! なら五百円やるから眠ってちょうだいお願い!;

マナセ:………。(不思議略)

D.C.:…いいかマナセ?
熊さん抱いて、座って、寝転んで、おやすみマナセ?;
寝ろ、今すぐ;

マナセ:…(熊抱っこ)…(座って)…(寝転び)………(すやすや)

D.C.:…どんなもんよ?;

響:涙ぐましいな;
…ああ、そろそろ打ち合わせの時間だ。

D.C.:休みの日くらい休みゃいいだろうに;
…時に響、今度の祝日の予定は?

響:特に何も?
じゃ、もう行くぞ。

D.C.:おお、行ってこい♪
…さて、俺たちも打ち合わせだ♪

マナセ:…(むくり)

D.C.:いや、お前はいいんだ。寝てろ;

マナセ:…(ぱたん)
100 五十嵐ファミリー
【フルハウス〜五十嵐さんちの場合〜part.2】


(コンコンっ)

D.C.:アリサ〜、いるか〜?

アリサ:入っていいよ〜♪

(ガチャっ)

D.C.:アリサ、今度の祝日の話だけど(買rクッ)………何やってんだお前?;

アリサ:今度のショーで着る水着の試着♪
どうこの貝殻ビキニ!

D.C.:ディズニーからオファーが来るかもな;

フィン:(ガチャっ)お邪魔しますですよ〜♪ …って何やってるんですか!?

D.C.:俺もそれが知りたい

チハ:大事な話ってアリサの水着ショー?;

アリサ:え、そうだったの!?

D.C.:ちげーよ馬鹿!!;
…ほら今度の祝日、何の日か解るだろ?

アリサ:結婚記念日?

チハ:白Nの?;

フィン:お隣の高松さ〜ん♪
ピンポンピンポン大正解〜♪

D.C.:お〜よく知ってんな〜♪ …よし、ちょびっと黙っとけ;
…聞いて驚け! 響の誕生日だ!

アリサ:あ、本当だ!

チハ:お祝いしなきゃ、プレゼント買ってケーキ焼いて♪

フィン:ケーキ!! 食べます食べます大好物です!

D.C.:『響の』誕生日ケーキだからな? 全部は食うなよ?;
…で、だ。
プレゼントは各自用意するとして、誕生日会に向けて役割分担を決めときたいわけよ。
まず俺! 料理兼遊撃担当!
次にチハ!

チハ:はーい♪

D.C.:お前は飾り付け担当、一目でバレたらまずいから地味めにな?
次、フィン! お前は出し物班長だ!

フィン:任せなベイビー?

D.C.:………すこぶる不安だが仕方ない;
最後にアリサ。

アリサ:は〜い♪

D.C.:大至急着替えろ;