がんじがめR20

魔法や魔術、階級社会が存在するこの世界で三大貴族とされる有能な血筋を持つ某公爵家に生まれた貴Cは公爵家の管理する領地で最も辺境の地とされる場所で軟禁生活を送る。軟禁と言うよりは最初から存在しない扱いである。
現当主である貴Cの父が市井の女に手を出して生ませた子(貴C)は魔力ゼロの子供。三大貴族と言われる公爵家の血統から魔力ゼロとは汚点であり恥であるとされ、現当主が市井の女の美貌に目が眩んで孕ませたと無責任な理由は何の意味も無く、非難されるのは生まれた赤子と母であった市井の女に向けられた。それでも少しの温情として住まいと生活出来るギリギリの援助として辺境の地にある屋敷で親子二人でひっそりと暮らすものの、肥立ちが悪くその後、命を落としてしまう。残された貴Cは現役を引退した(役立たず)と言われる極少数の使用人と共に身を隠すように暮らす中で日々願望を募らせる。もう自分の名を呼んでくれる母がいないと寂しく思い、使用人は自らの仕事に没頭し役目をこなすだけで自分の存在は無いものとして扱う日々に悲しみを覚え、孤独に不安に煽られる。
そんな時、誰も訪ねてくるはずのない屋敷に男が訪ねて来た。


「鬱々とした悲しみの心が私をここに導いた。お前の全てを明け渡すのならお前の全ての願いを叶えてやろう」

男は完璧なまでの微笑みで話し掛け提案した。これは契約だと。これは永劫続く切れぬ約束事であり誓いだと。
貴Cは頷く。その男の手を取って自らの願いを口にした。
自分の名を呼んでくれと。愛おしいと目を掛けてくれと、決して裏切らず、自分を見てくれと、自分と言う存在をしっかりと感じて欲しいと。

そして、今に至る。